有限会社AEメディカル

資料請求

コーチング視点でオリンピックをふりかえる⑥

2021/09/17

コーチングのコーチの視点から、オリンピックの監督やコーチ、選手のリーダシップについてご紹介しています。
今週は、以前このブログでもご紹介した東京五輪でフェンシング男子エペ団体のキャプテンとしてチームを金メダルに導いた見延和靖選手に再注目(『金メダルに導いた見延主将のリーダー力』)。
彼はチームの精神的支柱として若い選手を支えるだけでなく、とても大きな視野を持っているようです。

 

フェンシング界において「エペ」は、最も競技人口が多い花形競技ですが、日本では競技人口が少なく、代表の団体戦をマッチメイクするのもやっとという時代もありました。
しかし、ジュニア層の育成に注力し、世界ジュニアを制した山田優選手や加納虹輝選手を団体メンバーに抜擢するなど、着実に強化を図ってきました。

 

見延選手にとって、ライバルが増えれば個人戦で脅威になる一方で、団体戦の強化を考えれば喜ばしい出来事。
見延選手の見解はこのようなものでした。
「強い選手が増えて、どんどん代表に入ってくるのは“当然のこと”だと思っていました。自分だけ勝っていても練習相手が強くならなければ、強くなれない
むしろ僕よりも山田選手や宇山選手のほうが才能もあるので、下の若い世代もついてくるのは当然だよね、と思っていました。だから、焦りも喜びもなかったですね」

 

スポーツでもビジネスにおいても、ライバルの存在はモチベーションのアップにつながることが多いと思います。
しかし、ライバルに勝った途端に成長が止まってしまう。逆に、ライバルに負けるとモチベーションが下がるというように負の方向に作用してしまうこともあります。
また、「ライバル=敵」になってしまうと、チーム内の情報共有がしにくい、悩みを相談しにくいなどギスギスした雰囲気を作ってしまいます。
見延選手はライバルを“当然のこと”と受け止め、“敵”ではなく自分が強くなる、チームが強くなるための“仲間”だと認識しています。

 

そして、男子エペ団体の強さの秘訣を、こう語っています。
「4人いれば4通りのやり方がある。誰かが誰かの真似をするのではなく、オリジナルを貫くこと。
そのためにアドバイスはしても、ああしろこうしろとは言わなかった」
豊富なキャリアを持つ見延選手、天性の素質を持つ山田選手、強靭なメンタルを持つ加納選手、トリッキーなスタイルの宇山選手、それぞれの力が組み合わさったこのチームが世界で勝つことは驚きではなく、むしろ“当たり前”だったということでしょう。

 

チームの勝ちにこだわるリーダー、特に経験値の高いリーダーは自分の指示に従わせようとしたり、自分の意見を押し付けがちですが、選手それぞれのオリジナリティや強みを大切にする姿勢はさすが見延選手ですね。
リーダーにもいくつかのタイプがありますが、見延選手のように部下や後輩の考えや個性を尊重して、メンバーが力を発揮できるようにチームの土台となって陰から支えるリーダースタイルは、メンバー間の信頼関係を強くし、個々人が能力を発揮しやすい環境を作ることができます。

 

明日から行われる全日本選手権個人戦は、8月末に受けた手術の影響により欠場することが決まっているそうですが、ぜひケガから復帰して、これからもまだまだ高みを目指してほシカ!

 

参考:『「先輩にもここにいてほしかった…」見延和靖(34)が明かす、絶対に“エペ団体で金メダル”を獲りたかったもう1つの理由』