コーチングのコーチの視点から、オリンピックの監督やコーチ、選手のリーダシップについてご紹介しています。
今回は女子バスケットボールのトム・ホーバス監督についてお話しします。
大会終了後、テレビ出演した選手に「正直、オニ怖くて」と笑いながら言われていたのがとても印象的でした。
試合を見た弊社スタッフは「インターバル(休憩時間)、怒っているみたいですごい怖かったですもんね~」と言っていましたが、実際はどうなのでしょうか。
こんな記事がありました。
「選手たちには厳しく熱い。準決勝のフランス戦では第4クォーターでミスによる失点が重なった際、まだ点差があるにも関わらず、『こんなバスケットでいいんですか!』、『どうしてやることをやらないんですか!』と激高していました。ただ、厳しいだけではない。試合後は満面の笑みで選手と抱擁して健闘を称える。選手たちがホーバスさんを心から信頼していた」
ホーバス監督を調べていて印象的だったのが、別のスポーツに携わっている方も彼を大きく評価しているところです。
サッカー元日本代表田中マルクス闘莉王さんは
「この監督に鍛えられたチームの雰囲気はすごくいい。いつも前向きで、プレーも勇敢で迷いがない。
苦境に陥った時の心に響くコーチング。あれはとてつもなく大きいと思う。
タイムアウトでの日本語でのコミュニケーションに驚いた。状況に応じて選手にかける言葉が何よりもいい。
「プレッシャーに負けないで」という選手を鼓舞する言葉、勝つためのコーチングは心に響く。」
バレーボール元日本代表大山加奈さんが、ホーバス監督の指導をこう分析していました。
「選手の皆さんは口々に「練習が厳しかった」「監督の指導は厳しい」と話していましたが、この「厳しい」にも大きな差があるのではないでしょうか。
インタビューや試合中の指示を見ていると、トム・ホーバスHCはいつも「なぜダメなんだ」ではなく「あなたたちはもっとできるのになぜやらないんだ」と選手たちに語りかけていました。
つまり、欠点を指摘するのではなく「もっとできる」を強調する。同じ厳しさでも質は全く異なるんです。
強くなるため、勝つためにはもっと厳しく指導しなければいけない。
そう考えてしまうのかもしれませんが、可能性を引き出させるための厳しさと萎縮させる厳しさは違います。」
一番印象に残ったのは、複数の選手が「ホーバス監督は私以上に私のことを信頼していた」とコメントしていたところです。
相手を信じるというのは「コーチのあり方」として最も重要なことのひとつです。
しかし、言うは易し行うは難しで、実際にやるとなると結構難しいんです。
ホーバス監督は「コーチ」として信じるという素晴らしい土台を持っていたからこそ、銀メダルという大輪の花を咲かせることができたんだと思います。
参考:
『女子バスケ・馬瓜エブリン「正直、オニ怖くて」”トムさん”からの恐怖体験を暴露』
『井上康生、稲葉篤紀、トム・ホーバス…五輪を勝ち抜いた名指揮官の共通点』
『女子バスケから日本サッカーが学べる監督像 闘莉王「トムさんは外国人招聘のヒントに」』
『「なぜダメなんだ」ではなく「もっとできる」女子バスケから学びたい“厳しさの質”とスケボー選手の“清々しさ”』